ベッドという地面に投げ出されて根も葉も生えず、不要不急な人体としての無意味なサイズ感に心を占められそのままでいた。視線の先には天井の模様が土着のダンス。黒人は赤人と、黄人は緑人と、つないだ手をアーチ型にかかげればそのなかに碧の海峡が見える。葦舟にぐったりと小首を傾げた人々が逆さ向きにつながれているのは、アスマット族のビス柱か。漕ぎ手の丸太のような二の腕に白く刻まれた刺青の歯並びがいやらしい。ザトウの群れが白波に浮き沈みし、こげよ、こげよ、と船頭歌をうたう。周りを囲むヤシの木の虚飾さに、とろぴかるというひらがなを当てて苦笑した。指先がかすかにカサついているのを親指でなぞり、口を結んで同じ感覚を唇に感じる。

 こんびにという文字がネオン広告のように意識を横切っていく。飢餓感が右下腹からやってきて頭の周りを一周するあいまに、手元の電話が聞いたこともないような音を響かせるので、仕方なく腕の筋肉を使って顔まで持ってくる。画面を押すのにも指が太古の遺跡であるかのような錯覚におちいって、そのまま「あ…」と喉が他人の声を再生した。母親らしい声がしてきたので、朝ですかと聞くと何言ってるの夜中の12時よという文字列を吐かれる。デジタルなんだ知覚は、大脳が勝手に紡いでアナログにしてるんだ、「寝ぼけてるの?」無価値な音の明滅。あなたと談笑するのは嫌いではないけれど今はその時間ではないと思って/言って切電。終話の無音に放り出された自分が見える。

 心臓の毛もすべて抜かれてしまったあとで、おれはわたしはぼくはこんびにに行けるのかいけないのかと半日考えていていまだに空腹(くうばら)。咽頭は重く、耳は居場所を探している。ああそうかと耳から立ち上がり、耳から服らしきものをまとう。生活は仕草なのだ。他人の思考を排除して残るのは自分。筋肉の働きに他人の思考は作用しないと信じることで玄関にたどりつき、サンダルを経由して外に出、コンクリートとかアスファルトとかの上を滑って行った。こんびにまで10メートル。実際は150メートルなのだとしても。寒いのか暑いのか、皮膚は何も感じないつもりで無理に沈黙しているが布団の殻から抜け出た今、世界は氷河期で体の芯は頼りなく冷たい。

 エイリアンの母船内部のような田舎の表通りに、こんびにが強烈な光の塊を闇夜にむかって嘔吐している。この涅槃は24時間営業だ。天界の門は自動で開き、妙(たえ)なるしらべが天上から鳴り降りてくる。光で白化した内部へと侵入、目はくらみ足元をふらつかせながら一切れのパンと一口のワインをさがす。真っ白な視野の彼方に、特価のライスボールが浮かび上がるので必死に手を伸ばしていく。天よ、とふるえる唇が動くものの吐気だけがすり抜けていく。指腹をとおして響いてくる包装のいかにも人工物らしさに安堵、目も慣れて、ここは下界のこんびにであった。

 箱場ではコンビニエンスな顔をした人型がじっと立っている。その全身の筋肉や五感の機能のすべてを裏切ってあえて不動でいることの不気味さを全力で擁していた。これからあの無感無情の像にまみえる儀式を思うとかれはかのじょはこどもはろうじんは意志が後退しそうになる。お守りを、お札を…と探すまでもなく握りしめていたことに気がついたものの、手汗で原型をとどめない鮮やかさ。知ってる、瞳のない半眼から放射されている見えないビーム。架空の視線に、膝も腰も抜かれそうになりながら全身でお札を差しだす仕草がもの悲しい。

 するりと引き抜かれたような感覚とともに、手から他質の存在が去っていったのがわかる。ぶら下げられたままの異形の沈黙に耐えきれず、顔面の下から上へ裂けめが生じ不器用な自分の表情が左右に割れる。まるで忘れられた記憶に触れるようなそれだけは滑らかさ。ギザギザに歪んだ声が脳をまっすぐ突き刺すので吐くように応えるかすれ声。声は台のうえにぽとりと落ちた。しかしどうにか新たな一物を手におさめ自動的にきびすを直角方向へかえした。古い油が背筋を流れていく。ある確かさを噛みしめられるのは、成果が袋の底で小さく呼吸をしているからだ。涅槃の自動ドアの向こう、立像が半眼のままこちらにビームを放射している気がやまず、背中が熱い。いいんだもう無関係なんだという呪詛を口のなかでもみしだく。

 路上の闇の塊へと体をめりこますと、足指と足指のわずかなすきまにさえ染み入るほどの濃密さ。可愛げもなくただ単に無垢ですという体でさらされている素足がおびえている。白いアスファルトも可能な限りのいやらしさで足を飲みこもうとする。弱々しい足あとが波紋のように広がり、この古びた街のすべてを揺らす。天界の残照が補色となって視界をながれて遠のいていく。体はだんだん希薄になり、どこか違う場所に置き去りにされる。ただ袋の中身だけが魂の塊みたいに存在をゆらしていた。リズムは死者の呼吸よりも浅く、遅い。袋をぶら下げながら、袋に包まれている自分がいた。その重さに支配されるように歩き続けると、立ち並ぶ街灯が作る自分の影がぱらぱらと順に動いていった。足元の影は思いもよらない方向へと伸び、街自身の影とあやしく交わってもっと黒くなる。

 なお街は静かに興奮し、膨張し、ねじれているようだった。右へ曲がる角は左へ曲がる角と交わり、建物は建物を飲みこみ、何層にも重なりながら激しくずれ、あえぎあえぎしている。塀の向こう側では木々が息を潜めている。空腹が胃のなかで跳ね上がり、喉元まで達するが飲みこむべきものもなく行き場をなくして頭蓋で破裂し、耳鳴りとなって夜空に溶けていった。

 そこは自分の住処なのか、しかしそれもどうでも良くなり兎に角たどり着いたのだと思うことにする。ドアの鍵はない。鍵は自分のなかにあって自分に差しこんで回す。雑な仕様、雑な仕草。中に入れば外ではりついた不快な膜が乾いていっせいにはがれ落ちていく、剥片。同時に、内側からふくらむ新しい温度がある。振りまわされた意識が身体に返ってくるとともに自覚する、すべてを溶かしたいという欲求を失った胃が底でゆれている気配。しかしそれもまたゆっくりと消えてしまった。

 袋のなかでは石が身を固くしている。窓の外で街が鳴った。

ーーーーーーーーーーーーー

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全生物がねむった

夢を見ているのか つんざく咆哮のとどろき

すら まぶたの闇を突き通せない

予兆も希望もなく ただ茫洋とした空の海を

途方もない巨体が のんのんとわたりはじめる

その目は初めからふさがれ

光という光を吸いこんだ 何千年も

あとは体に刻まれたうたを 沈黙でうたう

るううらら るううらら

線が走ってきて新しい血管となる

運んでいるのは音の粒だ

その先でぽつりと また新しいうたが刻まれる

果てしのない循環

今や音も光も空も海も すべて封じられた

次の咆哮までに 風も化石となるだろう



※この詩は中島弘貴さんの写真からイメージして作りました。
https://www.instagram.com/p/C3pVM6vSupo/

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艦砲射撃の煙幕の夜

しとねにばらまかれた嫉妬の札を

集める指先の冷たさよ

かさねの上張りと下張りのすきまに

祈るように差し入れられた手が

深く隠していた羞恥をなでまわす

心は冬の空のように燃えあがり

赤子のよだれのような濃密さで空無を

ぬわぬわと染め上げてゆく、光

その私のみだらな口唇を

夜更けの空は振り返るようにして

盗み見ている



※この詩は中島弘貴さんの写真からイメージして作りました。
https://www.instagram.com/p/C6vkjdHyJ8U/

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何でもない午後

カーブを曲がった先に 魅惑の釣り針がきらめく

見事な曲線は 欲望をかき立てるための 

ワナだと 標識が教えてくれるけれど

ブレーキはもう踏めない

胸を張り裂いてあふれ出る 漆黒の笑いが止められない

笑いながら目の端では 入道雲の狭間から見下ろす大悪魔

をとらえているのに


銀色のどのウロコをめくっても そこには見慣れた答えが書かれている

ああそうだね そのとおりだね

それも知っているし知っていながら 快感のような黒波のしぶきに

全顔をびちょびちょにされながら

運命というわけのわからない糸で

一個の阿呆のように

いとも簡単に釣り上げられていくのだ

深淵で平べったい虚無の、口

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夏のアジアの腐ったうつくしい便ゾーン、から見る朝焼け

がんっと見開いた血走りまなこからビーム

微細なぷるぷる痙攣のさきを突っ走る、神経と死の列車

がんじがらめの欲望にムチ入れロウソクたらし、遅々ちち浪々らうらう

街の腐臭にまぎれて放屁、老人の勇ましき下半身が空中合体して機械獣

発糞はぽっとん奈落の底へ、妄想が高層へ深層へと右往左往そうしよう

処刑台に掲げられた女教授のうつくしい手首に浮き出るスジ2本に

陰鬱な破戒僧マンクの舌が上下している快楽城の午後ではある

毛をむしられたドバトの鳥肌がぶつぶつと泡おどる

大門から聞こえる呪文のかたちに有刺鉄線のみちみち

現実が人間に見せる無邪気な幻術を幻想というのなら、

この夢もまた滑稽に脱臼しただけの文脈なのだ

激しく隆起する海岸でひろった淫猥な生き物図鑑

に載っていた汚れた古写真の記憶をしぼり出す

分厚いゴム手袋をはめて軽快に手術を

永遠にうるおうトポロジー

ドバトがしゃべくるフィロソフィー

危険な描線はホルマリン漬けにしておけ

太古の矢尻のようなメスで白い腹をまっすぐに裂いていく

亜空を見つめるうつろなかんばせに呼びかけてみても虚しい

未来形で書かれた昔話を暗唱すれば、黒目がぐるりと後ろを向く

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アナコンダは沼から起立しおろかな虹色の太陽柱になった。幾何学のかたちをした猛獣が地面からかたどられると、すぐさま柱のよこっ腹にみついて引きちぎった。らう、と蛇はひと声ないて垂直な夜に向かってやわらかい腹を割ると、血も液もないプラスチックのように乾いたはらわたが、まっすぐに跳び出て夜の板を突きやぶった。おかしいかおかしくないか、下半身だけで返事してお尻をまくり上げたまま爪先立ちでポーズするから見てごらん。頭の太陽はぐらっとゆれて、ゆらんゆらん、ぼろん、と背後に落っこちた。形式美のニキビまみれの白眼で蛇の頭がにらみつけても、知らない。轟々と風の吹く静かな湖面から月が生まれて夜は、不完全のまま満ちることにひたすらにとらわれの心。蛇の産卵はなはなだしくも翻筋斗もんどりうって割れ目をひきさき出るわ出るわの大出玉。殻の内側から見る世界のそら美しさ、はかない惰夢をつみかさねるだけでただもう無駄に夢のダムは大決壊、とほうもない夢の濁流と化す。大樹の幹のような太い河、一本。その穂先で夜は描きなおされ、きょとんと空に置かれている。無情となげいてみても虚しい夜空、一本の線が飛んできてにやにや笑いをつけたしていった。すべての卵はかえり、平らな夜の揺籃の上をすうすうとすべりおちたあと、濁流にのまれてすべてつぶれた。蛇の頭が遅い涙で滂沱ぼうだしているがそれもまた、奇妙な夜から朝への緞帳どんちょうだった。

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物語を求める奴が多すぎる

物語禁止令

が発布され、禁を破ったものが捉えられた

ーー捕まえてきました!

ーーよろしい、首をはねよ!

ーー中にスイカが入っています!

ーーよし次っ!

ーーネズミです!

ーーミミズです!

ーー穴です!

ーーちょっと待て! 穴だと?

ーーはいっ穴です!

ーーこいつを連れていけ!

報告した役人は何かをわめいていたが、連れ出されていった

穴はその夜のうちに全土をおおいつくした

人々の肉も魂も絶叫もすべて丸呑みした

王は早々に国を脱出して難をのがれたものの

荒野の野獣に腹を食い破られて地に伏した

穴は夜空に向かって無限大のゲップを放った

人々は物語を求め、その結果

物語の中に飲みこまれたのである

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空気イスに座る男が

目を裏返して脳の闇を見ている

雨の洞窟

割礼の記憶

激痛が呼び起こされ

尖った眼球が脳を刺す

あごがガタガタとふるえ

ついには外れて膝に乗る

間髪入れずにだらりと長い舌が

シュルシュルとコードを巻くように

引っこんで男の気道を容赦なくふさいだ

ギョボッ

イェッ イッ カハッ

弾むように全身が跳ね上がると

まもなくグタッと絶命した

ぽっかり空いた口から

主人あるじを失った舌が

蚯蚓みみずのように

テュルテュルと這い出てきて

屍を舐めはじめた

音もなく

血をたぎらせた

一羽のカラスが滑空し

男の舌をくわえて飛び去る

涙をなくした男は

泣くこともできず

ただ腐っている

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ゆっくりと刀を抜く

番傘は雨でびしょ濡れ

ふんどしが洞窟のように冷たい

蛙もつらにしょんべんを浴びる

「おどれら!」

と言おうとして、「お」から激しくども

まだ刀は、抜いている途中

闇にならぶ濁った目、目、目、目、

面倒なので「お、お、おいッ」とだけ言って走る

ザバッシャバシャシャシャッ、としぶきが上がる

めちゃくちゃに路地を曲がると猫がいる

窮鼠きゅうそ猫を噛むいやいやいや噛めないって

時系列昇順降順無関係にだばだばと襲い来る、敵々の刀々のあめあられ

を、くねくねとよけながら踊る

路地裏ダンスホール

やがて雨は、

やんだ

おれは屍となって仰向けのまま鉛色の空を見ている

どうやらもう少しで刀が抜けそうだ

おれの刀は犬より長い

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ありあまる感情を不出来な箱につめこんで

引き出物として差しだす、それはただれた欲望

吹き出物だらけの美しい顔で、微笑まれても困惑

式場に林立する、反吐をかためて作った人形たち

すべてのペニスはねじ曲がっていて役にたない

オーヴェロバァ〜〜〜

新郎、新、ガーガーピーピー、郎はガーガーピーピー、どこですか

おお、舞台そでで倒れて泡を吹いているじゃあないですか

さすが新婦だ 仕事が早い…ひそひそ声がホールにこだまする

カ・カ・カ・カッ

長いですからね、ご覧なさいあのハイヒーーールを…

オーヴラヴォ〜〜〜

盛大な拍手を! 拍手を!

ミルクを持って来い、ミルクだ

いいね、いいね、の大合唱

蛆ひとつわいていない、ご覧なさいあの美体を…

神聖なる新婦です

記念にどうです踏みつぶしていきませんか、ここに新しい新郎野郎です

写真を撮るのも良いですね、写真屋はあそこで裸踊りをしていますから

おや、笑いすぎて血を吐いた

楽団は演奏を開始

箱を開けると小さな式場だ

欲望が詰まった婚姻式だ

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女は山になった

森林地帯を濃い体液で濡らす

蝸牛は腰線上をすべっていく 

蜘蛛は天球からぶら下がっている

すべては緑からうすいピンクへと、変わる

山女の恥毛にちいさな食台がおかれて、午餐が始まる

牛乳壜のなかに泳いでいるは哲学者

身を屈めて見つめる

太陽光線が卓上を跳ねまわる

不意に、りんごが割れた

今日はもう帰れない、と知る

太陽光線が危険水域を突破して、サイレンが鳴る

ほむらは足元まで来ている 災厄が踊っている

夜の代わりに黒い穴が私を忘却へつれもどす

重さが私を置き去りにしていく

ここでは皆狂っている

狂いのない世界など初めからどこにもなかった

ゆっくりと淡いのピンクへと染まっていく


止まれ

止まるな


あの山は、私だった

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コーチャーのハンドサインは

「脳を割れ、」

すばやい視線で敵を斬る 7人倒れた

おれはZUGAI頭蓋を引き裂いて立つ

NOUがプルルと震える

テレビのなかは生臭い水で満ちて、冷臓庫のHARAWATA臓物が泳いでいる

走り出せ、牽制球を恐れるな、まだ間に合う

深夜のドゥーム

暗闇が目を射る

白い女が見舞い姿で立っている 客席

もう昨日には死んだんだ

おれが遺書を書いたんだ

ブルーインクでおれ宛に

コーチャーはヤニ枯れた歯で笑う

右上2番C1、3番C2、飛んで飛んで6番C4

丸見えになるカリエスたち

を、おれは暗算そらで読み上げる

感情を捨てろ 紙に描いて捨てろ

もう脇腹が痛くてしかたない

滑りこんで白煙が上がる

OUT!!

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〈序章〉

昆虫は電流をうまそうに喰っている

繁殖の速度がぬるいからすぐに絶滅した

地殻変動も起こっていないのに


〈第一章〉

都会の女はスカートを持ち上げ

蒼ざめた顔でコーナーを突っ切っていく

太ももが笑いながら観客席を通り抜ける

楽団がネッケを演奏する

クシコス・ポス


〈第二章〉

大運動会があくびをして閉幕

団長は夕陽の裏側めざして逃げ帰っていく

かろうじて月がその爪をのばし

赤い耳を切りおとした


〈第三章〉

鱗を縫い合わせて皮膚をつくる

金属のように冷たい手がそこにある

テーブルに置かれた両耳

黄金の羽を裏返して、都会の女は眠る


〈第四章〉

(焼失とのこと)


〈終章〉

夜は盗まれた顔を探し回っていた

やむなく太陽がだるそうに朝を始めた

都会の女が朝のパンを焼く

窓の外を、人々が逃走していくのが見える

皆、靴下を履き忘れている

足の裏に陽があたって、まぶしい

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欲望の原野が創造された、記
肉付きのいい男たちがぎっしりと横たわっている
肌はぬらぬらだ
励起した男根が天を刺すように、男林だんりん

豆のような産婆が、無言でその肌をひっかいていく
そのたび、男の豪腹は どう!と波うってふるえる
結果、全員が耐えきれず懐妊 愚かである

あたら、児が宿れるような器官もなく
むっちゃくっちゃに器官をおしひろげてペニスを胎とす
うおんうおんと男林の目に涙

とこしえの滂沱と、咆哮、ふくれきったペニスよ
たまらず陽は陥没し、漠とした夕暮れがきた
ぶよんぶよんと腹が揺れている

地の果てまで、紅に染まって
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ストライクコース、ど真ん中!
思い切りスイングしておまえの頭を叩く
軽い打撃音のあと
頭は暗い都市の空を飛んでいく
きらめく虹色ネオン
道端で意識をうしなう詩人たち
みな踏みつけてぐしゃぐしゃの大通りを歩いていく怪獣
が、おまえの頭をキャッチして丸飲みする
糞もたれ流しだ
それでいい
それが美しい
絢爛に破壊された未来都市を突っ切っていく怪獣の内臓
のなかは、生あたたかいババアの胎内だ
おまえの頭は糞となって生まれ直すだろう
その、祝福を… ! 

- - - - -

(以下は改敲し作品集に収録したもの)

ピッチャーゆっくりしたモーションで投げました
バッター見逃し、キャッチャーがピッチャーの頭をキャッチして丸飲み
ストライク、三振
バッター怒り浸透、糞もたれ流しだ
それでいい
それが美しい
監督がなぐさめます
ベンチのなかは、生あたたかいババアの胎内だ
おまえの頭は糞となって生まれ直すだろう
監督!
祝福を… !
おや、ピッチャーは感動に打たれ自爆しました
グランドに飛び散った、色鮮やかな怪獣の内臓
拍手、大拍手
回はラッキーセブン、それでは皆さん「わたしを野球に連れてって」を歌いましょう

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ピンクの色をしてる
(ピンクの言語で話そう。)

言語は、音楽と、同じ である
の「である」を、で/あ/る/に分解

言語 は捨てる
音楽 はすでに無い

で・・・・・電気信号

あ・・・・・汗

る・・・・・フィニカプテルス ロセウス

フィニカプテルス ロセウスは一本足で立つ
彼らの膝をのばすことは、膝をまげること
立つ土下座、座る起立

ピンクの空を、
土下座のカタマリが縷々累々と飛んでくる

それはもう「る」じゃない、それは「す」だ
群れをなすすすすすすが発熱して地獄の暑さ

たらり、たらりと
流れてくるものあれはなんなんです?

それは汗です。

すの汗は(、)

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わしは好き者であるから
思いついた下衆はなんでも成する

人間の肌とか粘膜は
だいたいぬめっこいものが好物でな
脳髄はそういう触りを喜ぶようにできている

特に摩羅だな、
舌や瞼や尻の穴などもそうだ

ぬめいもの、ナメクジ、みんみず、どぜう
そんなものをたくさん捕まえてこさせてな
風呂にして入るのだが、けっこうな極楽地獄だ

やつらがわしの肉の下でな、苦しそうにのたうつのだよ
それがまた強烈な電気で、わしの神経が痺れるようなのだ

おう、おう、おう

精をこすり出してやるとな、
またいっそう身もだえて
わしにむしゃぶりついてくる

いやいや、ものの例えじゃよ
そういう女がたまにおるという話だ
山深い湯治場で飯盛りしてるような女よ

しかしまあ人間は

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天をつきさす鋼鉄のパイロンは、腐ったバベルの臭い

その裂け目からには、
静脈色のランプの明滅や、
からまり合いながら暴走する
チューブの群れが見える

いよいよ欲望の鋭角を反らせて、

咆哮、爆発

腐食した金属大地は恐怖にふるえ、
粘っこい失禁をした

勢いも猛々しく、パイロンは天をつき破り、
地獄の第二圏へと突入を始めた

止められない欲望の楽団が、
あまい痴呆の声で讃歌する

内部チューブは重々充満、
存分に鉄のスピルムを放出、
静かにオプスを終える

白濁の沼地と化した荒野に
なま臭い風がたむり、
夕暮れが空をえぐっていった

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無垢なさかな

の体をひきさいて

鉛のペニスをさしこんでいる

内臓をえぐりだし

血まみれのベッドで

さかなは息絶える

さかなの透明な絶叫は冷蔵室の空でこおりつく

さかなたちの叫びの結晶で

室ははりさけそうだ

さかなが最期に味わったのは

ぬらぬらと光る金属質な切れ味

気持ちよくいけたかい

ペニスをにぎった男の目が血走っている

口の端に、よだれ

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かわいた砂漠の皮膚のしたを

地下水のように血脈が蜿蜿うねっている

どろりとした黒い血が

おまえの欲望を溶かしこんで

わたしの熱いほとへとそそいでいる

絞めてやろうか そのだらりとしたふぐりを

おまえの喉仏がナムナムと上下するのが丸見えだ

三月十日みつきとおか 伸ばしに伸ばしたこの爪で

おまえの頸動脈をひと裂きさ

鉄錆の軋んだ音が響いて

聞こえない叫びが森にこだまするだろうよ

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たるんとしたその重みは欲望への供物

ひらかれた峡谷に彷徨いこむアナコンダを

キリキリとしめ上げてやりたい

おまえのアナコンダは小さく悲鳴を上げ

びちちびちち と、のたうちまわり

白いげろにまみれながらちぢんでゆくのさ


精気を吸って太くなったわたしのふとももは

ただ、ぶよぶよと揺れるようにわらっている

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私は日記を書きたかった

死ぬのは怖い

未来の私は死んでいるので

日記も詩も書くことはできない

だから私は日記を書いておくべきだった

いまさら帳面を広げても

口から汚らしい内臓が出てきて

白い頁を黒く染めるだけ


誰かある、ここへ、ペンを持て!

私の代わりにすべてを書きだすペンを…


あとはただ、祈り

自分の棺の蓋をしめるのみ

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誰だって雪の中を歩いていくような孤独を飼っている

ずぶ ずぶ ずぶ

と真っ黒い雪に足を沈めながら進むしかない

うしろからは赤い口をめくりあげた狼の群れ

この腐った身は重力のくびき

手も足も、眼球も耳朶もちぎれて飛んでゆく

錆びた鉄の森を抜ければ、雪原 


どこまでも白い ただただ白い

どんな白より、もっと白い

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ポカンと口を開けている

白痴の顔だ

行間が広すぎる、ダダダッ、ダダダッ

と階段を駆け降りる

午後の曳航船に引かれて灯台へ

古い椅子のあるじはなく、

うおおんと汽笛が鳴いても誰も聞かない

住み着いていた白い猫も死んだ

灯台守りが狂ったからだ

カモメが死肉をつつきにやってくる時刻

飢えた蟹たちもしだいに集まってくる

やがてはこの死の塔も腐り落ちるだろう

聞くもののない崩壊のメロディ、感情のない静寂の微笑のままに
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わたしは土中の雌ミミズ

義母のやつが鎌を振るったせいで

わたしの口は切り飛ばされた

わたしの口は太陽にかみついて

そのまま世界は終わった

太陽のかけらを拾い集めるために調査隊が派遣される

その前の晩、調査員のへそにもぐりこんでやった

おろかな彼は遠征中に妊娠し、

尻から巨大な雄ミミズをひねり産みおとした

わたしはそのミミズを丸呑みして

天にのぼって太陽になった


それが今の世界である

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手なぐさみとも言う

セックスはずっとしてない

せいきはいじる

いったあと違和感が残ってたので禁欲した

1週間やりすごしてこわごわやってみたら

ニューッて感じがあって止まりそうになったけども

そのまま突っ走ったら、いけた

なんというか

甘やかなふしぎないきだった

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下腹が疼くのであけてみたら

ヴァップブァバァーッという汚らしい呪文とともに

虹色の内蔵が飛びだした

便秘が明けたときのような解放感

とともに、もう子供は産めませんというお札を貼られる

あん あん あん

軽くなった体で不浄ともお別れ

下界の、ドス黒い人間の群れ(白目の白だけが無数にギラギラしている)

そのカタマリにダイブする

いく いく いく 

ああ、何もかも

しぼり出したいしぼり出したいしぼり出したいしぼり出して

出して出して出してやりたい

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