女は山になった

森林地帯を濃い体液で濡らす

蝸牛は腰線上をすべっていく 

蜘蛛は天球からぶら下がっている

すべては緑からうすいピンクへと、変わる

山女の恥毛にちいさな食台がおかれて、午餐が始まる

牛乳壜のなかに泳いでいるは哲学者

身を屈めて見つめる

太陽光線が卓上を跳ねまわる

不意に、りんごが割れた

今日はもう帰れない、と知る

太陽光線が危険水域を突破して、サイレンが鳴る

ほむらは足元まで来ている 災厄が踊っている

夜の代わりに黒い穴が私を忘却へつれもどす

重さが私を置き去りにしていく

ここでは皆狂っている

狂いのない世界など初めからどこにもなかった

ゆっくりと淡いのピンクへと染まっていく


止まれ

止まるな


あの山は、私だった