〈序章〉
昆虫は電流をうまそうに喰っている
繁殖の速度がぬるいからすぐに絶滅した
地殻変動も起こっていないのに
〈第一章〉
都会の女はスカートを持ち上げ
蒼ざめた顔でコーナーを突っ切っていく
太ももが笑いながら観客席を通り抜ける
楽団がネッケを演奏する
クシコス・ポス
〈第二章〉
大運動会があくびをして閉幕
団長は夕陽の裏側めざして逃げ帰っていく
かろうじて月がその爪をのばし
赤い耳を切りおとした
〈第三章〉
鱗を縫い合わせて皮膚をつくる
金属のように冷たい手がそこにある
テーブルに置かれた両耳
黄金の羽を裏返して、都会の女は眠る
〈第四章〉
(焼失とのこと)
〈終章〉
夜は盗まれた顔を探し回っていた
やむなく太陽がだるそうに朝を始めた
都会の女が朝のパンを焼く
窓の外を、人々が逃走していくのが見える
皆、靴下を履き忘れている
足の裏に陽があたって、まぶしい