ゆっくりと刀を抜く
番傘は雨でびしょ濡れ
褌が洞窟のように冷たい
蛙も面にしょんべんを浴びる
「おどれら!」
と言おうとして、「お」から激しく吃る
まだ刀は、抜いている途中
闇にならぶ濁った目、目、目、目、
面倒なので「お、お、おいッ」とだけ言って走る
ザバッシャバシャシャシャッ、としぶきが上がる
めちゃくちゃに路地を曲がると猫がいる
窮鼠猫を噛むいやいやいや噛めないって
時系列昇順降順無関係にだばだばと襲い来る、敵々の刀々のあめあられ
を、くねくねとよけながら踊る
路地裏ダンスホール
やがて雨は、
やんだ
おれは屍となって仰向けのまま鉛色の空を見ている
どうやらもう少しで刀が抜けそうだ
おれの刀は犬より長い