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2025/11/26

重機と純愛

掘削機械をかかえた重機が 

涎をたらしてやって来る

秩序としての建物を

たたきつぶす純真がある

海辺で水着姿の男女が飲むカクテルが 

もう機械油

帰るホテルはないと海に身投げするも 

工事現場の土砂があるだけ 

うなずいて夏が閉じ 秋のない冬が来て 

すべてはコンクリの下で眠った

2025/11/21

日記帳

物干し場から屋根にのぼり
日記帳をかじれば
血の味がする

洗濯物のように
思い出がはためくのを見ても
心は化石のようだ

指先にとまった天道虫と
すみやかに同化する
そのなめらかな邂逅

浮沈する思考を
一気に粛清していく
巨大な白刃のひらめき

脳裏にあいた風穴から
密かに粘液が入りこんだとしても
思い出が難なく弾き返してしまう

2025/05/26

台所で待っている

台所で包丁の先から
孤独がしたたっている

浴槽で2人寝ている
たくさんのバラが散って
赤い床がきれい

冷蔵庫には3人冷えている
かんたんな日曜大工
Do it your self だ

天国だって改造すれば
地獄になる

憎悪のいちばん美しい
弾丸をこめる
やさしい瞳にとどめを刺すため

濡れた髪も思いも二度と
溶けることのない絶対零度へ

玄関はいつだって
開け放してある
おまえのために

2025/02/18

バスに乗せて(脱詩つき)

バスが地図の真ん中を割いてやってきた

車輪はもうもうと燃え上がり乗客は影だ

車掌が割れた窓から腕だけで名前を引きちぎる

自分の名前を乗せてバスは出発した

忘却曲線を強引に暴走して消える

あとは

名前をなくした自分とバス停

むなしい形骸、胃痙攣

無銭飲食しながら 胃は食堂に捨ておく

早逃げの足もないが呼ばれる名もない ただ

骨の可動域が人形のようにガクガクとして

わびしい

埋めこまれた悲しみは暴力で吐き出すしかない

全部が好きだったはずのきのうに戻れない

輪郭だけでは生きれないから


(以下は脱詩*したバージョン) *脱詩する(depoetise)=リリシズムを排し、断片化・先鋭化する

衆人車両は破、地図まっぷ断つ
劫火、豪豪快快 影るる人々
粉砕す、ガラす、窓から出腕 ひっつか名み
衆人車、出っ発おん名ままそ
のカーブ強滑走、残おん音
後背

な無名名者=己おつかつ停場場|棒、粛々ナン
奇々して気が餓鬼の飢餓 胃が歪捻、微々しびれ転
虚貨幣空無、直・逃走せ足無明、無名、解 ゆい
かこつ骨コツ無く泣く、慨々ろう
虚弱輩
内臓内酷悪惨時、憤怒噴出が独希
まったくも全、方、好々や得たが否認悲行
沿う線、
不身体不形態そくて無生むたく