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2024/01/25

野球の中継

ストライクコース、ど真ん中!
思い切りスイングしておまえの頭を叩く
軽い打撃音のあと
頭は暗い都市の空を飛んでいく
きらめく虹色ネオン
道端で意識をうしなう詩人たち
みな踏みつけてぐしゃぐしゃの大通りを歩いていく怪獣
が、おまえの頭をキャッチして丸飲みする
糞もたれ流しだ
それでいい
それが美しい
絢爛に破壊された未来都市を突っ切っていく怪獣の内臓
のなかは、生あたたかいババアの胎内だ
おまえの頭は糞となって生まれ直すだろう
その、祝福を… !

2024/01/19

なめくじおんな

わしは好き者であるから
思いついた下衆はなんでも成する

人間の肌とか粘膜は
だいたいぬめっこいものが好物でな
脳髄はそういう触りを喜ぶようにできている

特に摩羅だな、
舌や瞼や尻の穴などもそうだ

ぬめいもの、ナメクジ、みんみず、どぜう
そんなものをたくさん捕まえてこさせてな
風呂にして入るのだが、けっこうな極楽地獄だ

やつらがわしの肉の下でな、苦しそうにのたうつのだよ
それがまた強烈な電気で、わしの神経が痺れるようなのだ

おう、おう、おう

精をこすり出してやるとな、
またいっそう身もだえて
わしにむしゃぶりついてくる

いやいや、ものの例えじゃよ
そういう女がたまにおるという話だ
山深い湯治場で飯盛りしてるような女よ

しかしまあ人間は

2024/01/14

無垢なさかな

無垢なさかな

の体をひきさいて

鉛のペニスをさしこんでいる

内臓をえぐりだし

血まみれのベッドで

さかなは息絶える

さかなの透明な絶叫は冷蔵室の空でこおりつく

さかなたちの叫びの結晶で

室ははりさけそうだ

さかなが最期に味わったのは

ぬらぬらと光る金属質な切れ味

気持ちよくいけたかい

ペニスをにぎった男の目が血走っている

口の端に、よだれ

2024/01/02

裏切りの皮膚

かわいた砂漠の皮膚のしたを

地下水のように血脈が蜿蜿うねっている

どろりとした黒い血が

おまえの欲望を溶かしこんで

わたしの熱いほとへとそそいでいる

絞めてやろうか そのだらりとしたふぐりを

おまえの喉仏がナムナムと上下するのが丸見えだ

三月十日みつきとおか 伸ばしに伸ばしたこの爪で

おまえの頸動脈をひと裂きさ

鉄錆の軋んだ音が響いて

聞こえない叫びが森にこだまするだろうよ