NEXT▶︎ 2026/5/4 文学フリマ東京42に出展
掘削機械をかかえた重機が
涎をたらしてやって来る
秩序としての建物を
たたきつぶす純真がある
海辺で水着姿の男女が飲むカクテルが
もう機械油
帰るホテルはないと海に身投げするも
工事現場の土砂があるだけ
うなずいて夏が閉じ 秋のない冬が来て
すべてはコンクリの下で眠った
物干し場から屋根にのぼり
日記帳をかじれば
血の味がする
洗濯物のように
思い出がはためくのを見ても
心は化石のようだ
指先にとまった天道虫と
すみやかに同化する
そのなめらかな邂逅
浮沈する思考を
一気に粛清していく
巨大な白刃のひらめき
脳裏にあいた風穴から
密かに粘液が入りこんだとしても
思い出が難なく弾き返してしまう