空気イスに座る男が
目を裏返して脳の闇を見ている
雨の洞窟
割礼の記憶
激痛が呼び起こされ
尖った眼球が脳を刺す
顎がガタガタとふるえ
ついには外れて膝に乗る
間髪入れずにだらりと長い舌が
シュルシュルとコードを巻くように
引っこんで男の気道を容赦なくふさいだ
ギョボッ
イェッ イッ カハッ
弾むように全身が跳ね上がると
まもなくグタッと絶命した
ぽっかり空いた口から
主人を失った舌が
蚯蚓のように
テュルテュルと這い出てきて
屍を舐めはじめた
音もなく
血をたぎらせた
一羽のカラスが滑空し
男の舌をくわえて飛び去る
涙をなくした男は
泣くこともできず
ただ腐っている