女は山になった

森林地帯を濃い体液で濡らす

蝸牛は腰線上をすべっていく 

蜘蛛は天球からぶら下がっている

すべては緑からうすいピンクへと、変わる

山女の恥毛にちいさな食台がおかれて、午餐が始まる

牛乳壜のなかに泳いでいるは哲学者

身を屈めて見つめる

太陽光線が卓上を跳ねまわる

不意に、りんごが割れた

今日はもう帰れない、と知る

太陽光線が危険水域を突破して、サイレンが鳴る

ほむらは足元まで来ている 災厄が踊っている

夜の代わりに黒い穴が私を忘却へつれもどす

重さが私を置き去りにしていく

ここでは皆狂っている

狂いのない世界など初めからどこにもなかった

ゆっくりと淡いのピンクへと染まっていく


止まれ

止まるな


あの山は、私だった

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コーチャーのハンドサインは

「脳を割れ、」

すばやい視線で敵を斬る 7人倒れた

おれはZUGAI頭蓋を引き裂いて立つ

NOUがプルルと震える

テレビのなかは生臭い水で満ちて、冷臓庫のHARAWATA臓物が泳いでいる

走り出せ、牽制球を恐れるな、まだ間に合う

深夜のドゥーム

暗闇が目を射る

白い女が見舞い姿で立っている 客席

もう昨日には死んだんだ

おれが遺書を書いたんだ

ブルーインクでおれ宛に

コーチャーはヤニ枯れた歯で笑う

右上2番C1、3番C2、飛んで飛んで6番C4

丸見えになるカリエスたち

を、おれは暗算そらで読み上げる

感情を捨てろ 紙に描いて捨てろ

もう脇腹が痛くてしかたない

滑りこんで白煙が上がる

OUT!!

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〈序章〉

昆虫は電流をうまそうに喰っている

繁殖の速度がぬるいからすぐに絶滅した

地殻変動も起こっていないのに


〈第一章〉

都会の女はスカートを持ち上げ

蒼ざめた顔でコーナーを突っ切っていく

太ももが笑いながら観客席を通り抜ける

楽団がネッケを演奏する

クシコス・ポス


〈第二章〉

大運動会があくびをして閉幕

団長は夕陽の裏側めざして逃げ帰っていく

かろうじて月がその爪をのばし

赤い耳を切りおとした


〈第三章〉

鱗を縫い合わせて皮膚をつくる

金属のように冷たい手がそこにある

テーブルに置かれた両耳

黄金の羽を裏返して、都会の女は眠る


〈第四章〉

(焼失とのこと)


〈終章〉

夜は盗まれた顔を探し回っていた

やむなく太陽がだるそうに朝を始めた

都会の女が朝のパンを焼く

窓の外を、人々が逃走していくのが見える

皆、靴下を履き忘れている

足の裏に陽があたって、まぶしい

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